Nicola
Conte インタビュー ( ニコラ・コンテ)
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Nicola Conte インタビュー ( ニコラ・コンテ)
Interview & Text by jun
ide
取材協力: Miho Harasawa,
Iori Ono@Blue Note Tokyo,Y.Saito@Universal Music
●最新作“リチュアルズ”のコンセプトについて教えてください。
アルバム全体を通して神秘的なムードを醸し出したかった。このアルバムでは、他の文化からの要素を取り入れながら、自分の目指すスタイルに近づけていったんだ。
その一方で歌詞に関して言うと、自分の想いを表現するように心がけて、社会に対する大切な私的なビジョン、そしてユニバーサル・ビジョンを伝えたかった。僕の作品集のひとつとして、その中には沢山のアプローチの仕方があるんだけど、作品を通してリスナーに対してそれぞれの人生や目的のようなものを探すキッカケになればいいなと思っているんだ。
例えば、“Karma
Flower”は僕が歌詞を書いていて、プロテスト的な内容になっている。「戦争反対」を掲げているのと、利益を追求する者たちに不当に扱われ搾取されている人々に対するメッセージ、そして愛について表現しているんだ。人間の人生について煎じ詰めた、すべての人々のカルマについて書いたものだ。この世の中には本当に多くの惨状が至るところで起こっていて、本当に信じられないんだけど、2008年になった現在でも40〜5
0年前に起こっていた状況となんら変わらない。第二次世界大戦以降も、宗教の名のもとにおいて、いまだに武器を使って殺戮が繰り返されていて、我々はまだ同じ状況にいる。聖戦(Crusade)は、紛争解決手段のひとつとして行われている現状がある。
現代で、ものすごく先進的なテクノロジー社会のもとに暮らしていると同時に、僕たちは様々な問題のなかで生きている。このように虐げられる人々が存在する事が現実的に起こり続けているなか、まだまだ文明化した社会とは言えない。もし我々がこの状況を認識し、兵士達から武器を取り上げない限り、状況は変わらないと思う。それぞれの相手に対して敬意を払わない限り状況
は一転しない。我々が理解しなくてはいけない事のひとつは、 「多くの問題の原因のひとつにあるのは、 強欲な資本主義経済から来ている」ということだ。我々自身が資産の考え方を変えて行き、
我々の世界をより良い価値観へと変えていく必要があるんだ。
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●今作では、13曲中11曲にボーカルが入ってますが、どんな意図があったのでしょうか?
今回はジャズのフォーマットで、自分で歌詞を書いてアルバムを作りたかったんだ。新しいオリジナル曲を作る想いが強かったのと、サウンド自体は本物のジャズを目指
し、その上に本物を歌詞をのせてみたかった。僕はポエトリーを深く追求していて、ひとつひとつの曲に対して価値のある詞をのせて行きたかったんだ。
ラブ・ソングにしても何にしても、歌詞は本当に重要な意味を持ち、曲を永遠のものにするものだからね。
●ボーカルにホセ・ジェイムズやアリーチェ・リチャルディを起用してますね。
僕はホセやアリーチェの声質やテキスチャーがすごく好きなんだ。僕は声自体を楽器の一部として捉えている。ある特定の“サウンド”が曲の中で必要になるんだ。それにボイスの奥にひとりの人間が存在することが好きだし、曲の一要素として必要なんだ。ホセは本当にいい奴だし、アリーチェはとてもチャーミングで素敵な女性だ。シンガーは、自分にとって単なるボイスだけという事だけではない。個性を持った人間として彼らのことを好きだし、ボイスはその人のエクステンションだと思う。
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●今作では、ヨーロッパで活躍するピエトロ・ルッス(p)、テッポ・マキネン(ds from FCQ)、ティモ・ラッシー(sax from
FCQ)などの、著名なアーティスト達が参加されてますが、 どんなキッカケでアルバム制作に加わったのでしょうか?
もともと彼らとはツアー活動などを通じて友人という事もあるし、今作のレコーディングを通じて自分のバンドの幅をより拡げて行きたかったから、彼らに声をかけたんだ。
実際、自分のコンサートでは常にメンバーを1、2名変えていて、それをすごく楽しんでいる。常に何か新しい事を創りだすことが出来るんだ。僕は色々な人々が出逢い、そこから何かが生まれる瞬間が好きなんだ!
イタリア人、フィンランド人、ドイツ人、アメリカ 人たちのミュージシャンを通じて、より自分のバンドに拡がりを持たせ、未来へとつなげて行きたいんだ。すごくユニークなフィーリングを持つ事が出来るんだ!
●レコーディングセッションでは、何かチャレンジはありましたか?
それぞれのミュージシャンは本当に素晴らしい人たちだったから、 レコーディングはすごくスムーズに進行した。 ひとつ重要な事を挙げれば、そこにはすごく強力な音楽的アイデアがすべての背景にあること。例えば、今回は僕がそれを理解した上で、ベースのリチャードはその解釈者として参加してもらったんだ。それをお互いが理解した上でスタジオに入れば、その雰囲気は本当に素晴らしいものになる。なにも難しいことは無いんだ。ただ一つ、みんなでベストなサウンド、そしてベスト・パフォーマンスを目指して演奏することなんだ。しかし、自分にとって重要なのは、音楽自体がすごくエモーショナルであるかどうかという事なんだ!
レコーディングして、僕がどれがベストなものかを選別し決定するんだ。それはエモーショナルな観点から決めていて、それが一番強力だと思う。
●どのトラックが一番思い入れが強いですか?
もちろんすべてのトラックを気に入っているよ。その時々によって変わるけどね・・・ある時はこの曲、またある時はこの曲みたいに、気に入っている曲は常に変わるんだ。僕のムードによって音楽自体が変化しているような感じだね。
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Early development:
●もともとは南イタリア出身ですが、ご自身の音楽バックグラウンドについて教えてください。
自分にとって、南イタリアのバーリは音楽的に特別な場所では無い。自分のホームタウンではあるけど、町から音楽的な影響は全く受けていないんだ。しかし、何らかの影響があるかといえば、町の地形や雰囲気や空の色とか、海とか田舎町の風景とか、育って来たなかで毎日見た風景を心に留めていることかな。
●ギターを弾いたキッカケは?
少年時代に、クイーン、ジミ ・ヘンドリクス、それにエリック・クラプトンが大好きだったこともあって、ギターにのめり込んで自然とギターを弾くようになったんだ(笑)
●少年時代には、どんなアーティストの音楽を聴いて育ったんですか?
本当に色々なタイプの音楽を聴いて育って来た。 ロックに傾倒した時期もあれば、ヒップホップを聴いた時期もあったし、レゲエやダブを聴いたり。そしてジャズが自分の人生の中に入って来てからは、ジャズ一辺倒になったんだ。だけど、今でも色々な音楽を聴く事が好きだよ。
●DJをスタートしたキッカケについて教えてください。
もともとラジオ局でショーをやっていたんだ。ある日ラジオ局でパーティーをオーガナイズした時に、彼らのリクエストでたまたまDJをやる事になって、そこで最初にターンテーブルに触れたのがDJになるきっかけだった。それから暫くして、大学に進学して、自分自身が確信を持てるような道に進みたいと悩んだ時期もあった。だけど、本気でDJを始めるようになり、自分自身のスタイルを探し続けていて出逢ったのがジャズだったんだ!僕にとって、ジャズをクラブでプレイするという事は、何かとても“アーバンゴッド”的な事だと思っていた。自分自身でも、他とは違う何かをやっているという認識は持っていた。
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Mid development
●南イタリアで“QUINTETTO X”と活動していた頃の役割について教えてください。
僕にとって“QUINTETTO X”は、バーリにいた頃のバンドのひとつに過ぎない。そこではレコーディング・スタジオで彼らのサウンド・クリエイトとか部分的な手伝いをしていた。音楽を創作する上で、何かアイデアを彼らにアドバイスしてあげたり・・・
結成時には、インストゥルメンタルから始まったんだけど、議論を重ねるなか、ボーカリストを入れる事が重要だという結論に至ったんだ。バーリにいた時はシンガー抜きでスタートしたんだけど、いずれブラジリアン・シンガーを入れたいという想いが強くなっていった。ある日ローマでのギグを観に行った時に、たまたまDJをやっている友人がある小さなレコーディング・スタジオへ連れて行ってくれたんだ。
そこでロザリア(Rosalia De Souza)を紹介してもらったんだ。最初に彼女を見た時、本当に美しい女性だと思ったよ! それに彼女の歌声をとても気に入って、
その後、彼女を“QUINTETTO X ”のメンバーに紹介した。それがキッカケで彼らとコラボレーションするようになったんだ。
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●ご自身の活動を拡げて行く中で、98年にファーストアルバム”Jet Sounds”をリリースされましたが、どんなコンセプトだったんですか?
“Jet Sounds”は1998〜2000年にかけて制作したアルバムなんだけど、 当時僕はB級のイタリア映画のサウンドトラックにかなりハマっていて、沢山の映画を貪るように観て、古いビデオテープにある映画音楽を探していたんだ。そしてある日スタジオに入って、サウンドトラックから得たインスピレーションとフィーリングをベースに新しいサウンドを創ろうとした。そしてその中に色々な要素を取り入れたくて、サイケデリックやジャズやブラジリアン・サウンド、ラテン・サウンドなどを中心にしたイメージを含ませたんだ。
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●特に“Jet Sounds”以降、世界中のクラブ・シーンアーティスト達と関わりあいが増えていきましたが、その後活動に影響を与えましたか?
活動当初からDJとしてクラブ・シーンには関わりがあるけど、現在ではプロダクションにおいても、クラブ中心というよりは部分的に関わりを保つようになっている。初めて日本を訪れた際に、シーンの重要なアーティスト、DJなどと出会い、だんだんと友人関係を築いて行った。今となってみれば、それは個人的なリレーションシップを持続的に保つ事ができたし、友人になる事によってそれぞれの人々が共通の事柄によって繋がりを持つ事が出来た。自分が日本を訪れたり、彼らがイタリアを訪れたりしてくれたりと、音楽を通して交流をはかることが出来る。音楽は世界中の各国の人々を繋げる事が出来て、本当に素晴らしいものだと思うよ。
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●その後、2004年には、名門ブルーノートから セカンド・アルバム“Other Directions”をリリースされましたが、どんな経緯だったんですか?
“Jet Sounds”の後、ロザリアの作品のプロデュースや沢山のリミックス・ワークをこなして行く中で、 2004年に“Other Directions”をレコーディングした。このアルバムを仕上げなくてはならないという、とても重要な感じがしたんだ。そしてライブ・バンドのような形で、アコースティック・インストゥルメンツのスタイルを取り入れたかった。
最近のテクノロジーは古いものを飲み込んでしまっている中で、オーガニック・サウンド主体としたバンドを通 して、音楽に対してより人間らしい態度をとることが重要だと思ったからなんだ。そういった考えから“Other
Directions”が生まれた。
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BEST WORKS
●今までリリースされた中で、一番のベストワークとは?
特に自分がプロデュースした中で、どれが一番好きというわけでは無くて、すべての曲に対して同じような愛情がある。 その中でも、いくつかの曲については自分にとっても価値の高い作品もあるけど、まず“Bossa
Per Due”はとても重要だと思う。それに“New Standards”も重要だし、“A Time of Spring”と、“Kind
Of Sunshine”もトータル的な内容は今まで手掛けてきた作品の中でも重要だと思う。
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●イタリアやヨーロッパでの最近のジャズ・シーン動向について教えてください。
スタンダードなジャズはとても強くて盛んだよ。過去20年に渡り、イタリア、ヨーロッパから、多くの新しい才能がどんどん出て来ている。その中でも本当に才能のあるアーティストは、他へ影響を与えるくらいに素晴らしい表現力を持っていて、今回の自分の最新作“リチュアルズ”にも、そういった人たちに沢山参加してもらっているんだ。
今後も彼ら以外の新しいミュージシャンとも、何らかの形でコラボレーションしていければと思ってる。名前を挙げるとしたら、今回アルバムにも参加してもらっているジアンルカ・ペトレラ(tb)、
ファブリツィオ・ボッソ(tp)、ピエトロ・ルッス(p)、それにステファノ・ディ・バディスタ(sax)など、本当に沢山いるよ。
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●今後のモーダル・ジャズの展開について
それはとても説明が難しい。僕自身の音楽がどういう方向へ向かっているかは、まだ良く分から ないけど、常に進化し続けている。いま現在シーンは少し落ち着いた状態になっていて、本当に沢山のタイプの音楽が出て来ているけど、それは今まで連綿と過去からやって来たもののリフレクションに過ぎないと思う。
おそらく、殆どの事は音楽の中でやり尽くした感があると思う。やり残した事とすれば、何か過去の作品の中から部分部分を抜き出して来て、それらを違う形のフォームにすることかな?!
今後音楽がどういう流れになって行くかを予測するのは本当に難しい。テクノロジーを通しての進化、開発はあると思うけど、それらはあくまでもひとつのインストゥルメントとしての使い方であり、音楽の進化においての究極の形では無いと思う。
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●今後のプロジェクトプランについて教えてください。
もちろんプランはあるよ! でも全部しゃべることはしないよ(笑) なぜなら、とても長い時間をスタジオで過ごして来たからね・・・ もしかすると年末から来年にかけて、ニュー・アルバム制作のためにスタジオに入る予定なんだ。ひとつは、エレクトロニック要素の強い作品を創ろうと考えているのと、もうひとつは自分名義でやろうと思ってる。“Other
Directions”の進化したものとして“リチュアルズ”が出来て、 次作は”リチュアルズ”から更に進化したものになると思うよ! 強いていうならば、
アフロアメリカンとヨーロピアン・ミュージシャンが、より近づいて行く感じだよ。
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●How
does music make U feel?
音楽自体は、自分自身が感じるもの。何ていうか自分自身の一部のようなものだよ。音楽を通して、自分自身を表現するものであり、言語のようなものだと思う。
ビジョナリーな言語のような。そして海のすぐそばに住んでいて、そこから常に聞えてくるサウンドのような感じで、その後にそれが自分の一部分になっているような感じが、自分にとっての音楽だと思う。
●日本のファンの方々へメッセージをどうぞ。
僕の音楽を聴いてくれている、すべてのファンの皆さんに対して、ありがとうの気持ちを伝えたい。皆さんのおかげで、僕がアーティストとして活動をつづけられるからね。
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■Nicola
Conte ( ニコラ・コンテ)◆HP
本国イタリアのみならず現在の新世代ヨーロピアン・ジャズ・ムーヴメントを代表するプロデューサー/DJ/ギタリスト。1995年にレーベル「スケーマ」を立ち上げ、イタリア国内にクラブ・ジャズ/ラウンジ・ブームを巻き起こすも、近年は自らギターを手にし、ジャズ・ミュージシャンたちとのセッションから生まれる有機的なサウンドを核としている。2008年9月に発表したサード・アルバム『リチュアルズ』でも、生音100%のスタイリッシュで良質なモーダル・ジャズを展開し、クラブ・ジャズの範疇だけでなく本格派のジャズ・アルバムとしても高い評価を得た。DJとしては、ジャズ、ボサノヴァから打ち込みまでを自由に行き来するプレイに定評がある。
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[取材協力:/
Miho Harasawa, Iori Ono@Blue Note Tokyo,Y.Saito@Universal Music, Interviewed
& Text by Jun Ide]
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