ジャスミン 特別独占インタビュー


ジャスミン(Singer/Poet)

NYハーレム出身の”ジャスミン”が、今年7月に約10年もの長い歳月をかけて1stアルバム『Word of mouth』を発表。
プログレッシヴ・アフロセントリック・ジャズというコンセプトの元に制作され、発売直後より、すぐさま日本のクラブジャズシーンでも話題になった。 彼女の創作する内省的な詩のアプローチは、聞いている者に対し人生とは何か?を熱く 語りかけてくるようだ。黒人であるが故に持つ彼女自身のマインド コンフリクション(人種差別、 、黒人犯罪、人権問題との葛藤)を基盤に創作されている一つひとつの曲には彼女自身の人生の フィルターを通し、悩める人々の人生に対して、前向きで力強いソウルフルなメッセージがいっぱい詰まっている。  

10月18日、待望のジャスミンの初来日公演は東京は南青山にある”ペリエワンダーランド” 地下1階にて行われた。彼女のバンドはベーシスト兼ジャスミンのプロデュサー、 NY音楽界で多方面で活躍されている”Nob Kinukawa”氏との特別デュオ構成で行われた。 そのアーティスティックでこじんまりとしたスペースには、国際色豊かな沢山のゲストで賑わっており 彼女が歌い始めると会場で歓談していた観客達は彼女のパフォーマンスに注意を払いはじめた。 まずはKinukawa氏の奏でる6弦ベースのジャズィーなリフがとても印象的な 『Time and time』、彼女が全身全霊で放つ、図太く、且つ暖かみのあるソウルフルボイスが融合する。 彼女自身が人生の大切な何かを訴えかけるような詞の内容で一気に観客の心を掴み、ラストソングの『Fear』あたりには、自分を含め敢然に彼女のペースに呑まれていた。 とにかく彼女が放つ驚愕する程の低音から高音にいたるまでのピッチに、私はただただ体が震えるくらい心地の良いヴァイブを全身で感じておりました。そんな素晴らしい才能の持ち主のジャスミンのライブはとにかく最高で、ライブ終了後もその余韻に浸りながらも、ジャスミンと独占インタビューをさせて頂きました。
彼女の世界に興味がある方は是非『Word of mouth』(Silent Fleet,Amsys Co.,LTD)をおすすめいたします!

[Supported by Silent Fleet, Amsys Co.,LTD,and La Fabrique/ Produced by iMedia24.tv ,
10/25/2002 interviewed by jun ide]

Jasmin exclusive interview
[Text & Interviewed by jun ide]

まずはジャスミンさんが音楽に関わって来た経緯をお話いただけますか?


私はもともとフィラデルフィアで幼少の頃ゴスペルからスタートし、自分の中でそれを消化した後に、 ジャズへと移り、それから自分自身のスタイルの音楽をスタートしたのよ。なぜならその頃 スタンダードには飽きあきしてきて、もう自分にとって何も訴えなくなったからなのよ。だから自分で ポジティブな詩を書き、自分自身の音楽を創る事を始めたの。 私の音楽によって聞いてくれた人たちが何か自身の人生にとって、ポジティブな行動を起こしてくれたらなと 思ったのよ。なぜなら私自身が影響を受けながら聞いて来た黒人音楽のルーツであるジャズ、ソウル、ファンクなどの、アーティスト達によって、自分自身の人生もポジティブに変化していったのよ。その中でも特に好きだったアーティストは『カーティス・メイフィールド』と『ギル・スコット・ヘロン』なんかで、もう彼らの音楽を聞いているだけでハッピーな気持ちになり、力が湧いてくるような感じにしてくれたの。 だから私自身もそのお返しとして、同じ事をリスナー達にしてあげたいの。それは自分が詩を書く事によってしか実現出来ない事なの。自分はそんな感じで音楽と関わりあって行きたいのよ。 でも基本的に私は音楽を通して、”ライフ・アンバサダー”、(人生の案内人)として、それぞれの人々の人生についてを考えるきっかけづくりを与えてあげ、その内省的なアプローチによって、その人々自身の人生を良い方向へ導いて行ってあげたいの。各々がもつ自然体な精神、自身の過去を尊び、今の自身を尊び、色々な事柄が全て私の音楽に包有しているの。 それから忘れてはいけないのは、我々自身がブラック・ピープルとして背負っているヒストリー、なぜなら私自身がアフリカ系女性だから、全ての事柄の局面を見る時に アフリカンの視点で物事を考えてしまう。それ事体を私はいつも思い起こし、リスペクトし、人生自体がその視点によって考えて行かなければならない。それは私がアフリカン・ピープルのひとりとしての責任なの。

●ジャスミンさん自身がシンガーとして、何かを表現したいと思う時、
どんな時にインスパイアされて新しい曲を創作するのでしょうか?


私は曲を創るにあたって、全くフォーミュラーみたいなものは無いの。時折、前触れも無く 突然ポエトリーを書きたくなったり、それに小さなメロディーラインが浮かんできて、 それがごく自然にひとつの曲へとなって行くのよ。そこには本当にフォーミュラーや、 理由は存在しないの。私自身が思うに、曲をつくるのに理由なんていらない、 音楽自体は無理矢理創造するものではなく、産み落とされるもの、それが本当に 自然に来るものが少しずつただひとつになって行くもの。それ自体は私の人生そのものなのよ。 今ちょっと思ったんだけど、音楽を創る切っ掛けって、毎日の生活の中でなにかしらの事象が起こり、 突然何か書いてみたくなったりするわね、その中に自分が信じる人生哲学や、信仰を 織りまぜてその曲に託すの。



●今年7月日本で発表され、クラブジャズシーンで話題になった、 あなたのアルバム
”Word of Mouth”のコンセプトをお聞かせください。


 基本的にあのアルバム”Word of Mouth”を仕上げるのに10年かかったのよ。 そして悲しい事に私が10年前に世界の情勢を懸念して書いた詩が、現在も依然として そのメッセージが必要だという事。事実そのアルバムの中の一曲で”ノータイム・フォー ・ダンシング”の、オリジナルラインは今から約10年前の1990年に書いて、97年頃を想定して 書いたものなのよ。当時7年後を見通した上で書いた事なんだけど、、今実際に私達は2002年にいて、 私達を取り巻く状況は何にも変わっていない。 その曲の詩のラストラインには、”センスレス・War”(感覚麻痺の戦争)について書いてあるんだけど、 またこれから我々は、その”感覚麻痺の戦争”をはじめようとしているのよ。その事を懸念したこの詩は今の時代にもう一度同じメッセージを訴えかけてるような感じよ。その事に関して私はすごく不幸せな気持ちなの。もっと皆前向きになり、次のステップへ進んで欲しいと思うわ。でもまだこの世の中は、私の書いた メッセージが本当に必要だって事は明白よ。


●その10年間を通して産まれたあなた自身の作品の中で一番大好きな曲についてお聞かせください。

私が創った中で一番好きな曲は、”good citizen”(善良な市民)、あの曲は 自分で言うのもなんだけど、すごく良い曲だと思うわ。基本的にあの曲は黒人社会から見た、 白人社会へ向けてのメッセージなの。どうして黒人達はアメリカ社会の市民のひとりとして、白人中心社会の中で同じ様に扱われないのか? 黒人に対する公開リンチなどは私が生まれた60年代になって漸く止まったが、実際にそのような公然な”リンチ”が影を潜めただけであって、時代が変わった現代でも黒人達に対して、スピリチュアリー、インターレクチャリー、そしてビジネスの世界でも、白人中心社会の中で様々な形に代わり差別は続いている。 そしていまだに我々黒人同士でもリンチをし、お互いを傷つけあっている。そのような現実の状況の中でどうすれば、”善良な市民”になれるのだろう?常に社会のルールが変化するその白人中心のゲームの中で勝ち続ける事はとても困難な事なの。 いつでもの白人中心のプレイフィールドの中で、パワーシフトが起こり続けているのよ。それ故にあなたは いつでも誰よりも賢く、速く、そして誰よりも高くジャンプし、果敢にも挑戦し続け、その白人中心社会の中で勝ち得なければならないの。 実際問題、全米の約80%の犯罪者達は黒人であるという現実の中で、どうしたら、我々黒人達がその白人中心の社会の中で”善良な市民”になれるのだろう?と、、我々黒人の中でもし自分が”善良な市民”と思っている人の中でも、実際は周りに合わせるだけの偽善者かもしれない。私はいつでも真剣にどうすればそれぞれの人生が改善できるか?を考えているの。


●悪夢の9・11漸く一年が過ぎましたが、最近ジャスミンさんが感じるNYの音楽シーンについてお聞かせください。何か音楽シーンに大きな変化は知覚しましたか?

私が思うに最近のNYの音楽シーンは特に何も変わっていないと思う。 ただ沢山の人々が”9・11バンドワゴン”に便乗しようとして9・11について感傷的な曲を色々と歌っているわ。 私自身の目からはNYの音楽シーンでは、特に何も変わっていないと思うけど、以前は皆がテロ行為に対して 沢山非難をして、センティメンタル・ヴァイヴを感じていたけど、最近では漸く今迄通りの生活に戻りつつあり、皆それぞれの現実なライフと向き合って新しい行動を起こし始めていると思うわ。 ホント自分自身のマインドは殆ど前と変わりないけど、そろそろ皆、本当の現実に目覚めて欲しいと思うわ。 9・11は、我々にとっての目覚まし時計だったのんじゃないのかな?!。あの忌わしい出来事は、思いっきり 我々の頬にビンタを食らわしてくれたのかもしれない、もう今さら感傷的になっている場合ではない、 今我々は早く立ち上がらなければならない時なのよ。皆それぞれの行動を変え、態度を変えて、自分の行動を変える為の優先順位を決め動く時なのよ!今はもう9・11のホームマーク・カードを見て感傷している場合じゃないのよ! でも実際には多数の人々が未だにそのショックから立ち直れずにいる。けれども今さら起こってしまった事を 悔やんでもしかたないし、どうする事も出来ない、、 皆は自分自身の責任の元に行動し、前向きに自分の人生を変えて行くしかないのよ!もしそれに対して 何も行動を起こさなかったとすれば、あなたの人生は無意味なものになってしまうかもしれない。 私にとって9・11は、もう既にフォト・アルバムの中の出来事なのよ。


●How does music make you feel?

私にとって良い音楽とは、私自身を”クイーン・オヴ・ザ・ワールド”の様な気分にさせてくれるわ! とても幸せな気持ち、ナチュラルハイに・・・。グッドミュージックは自分の気持ちをユニバースの中の 神のような感じにしてくれる。(笑)良い音楽はいつでもそんな気持ちにしてくれる筈よ。 もし音楽自体にそういう良いヴァイヴが無い時は、その何かがおかしいのかもしれない。最低でも その音楽を通してあなたに何かを考えさせてくれる筈よ。 Thank you very much Jasmin!


[取材協力:Silent Fleet,Amsys,La Fabrique]
[企画、取材、テキスト 井出 淳 iMedia24.tv Japan]

[Supported by Amsys,Silent Fleet, La Fabrique , Produced by iMedia24.tv 10/18/2002
Text & interviewed by jun ide]

ジャスミン経歴

幼少時代よりホームタウンのフィラデルフィアでゴスペルシンガー/ピアニストとして 育ったジャスミンは、80年代後半テンプル大学作曲科在籍中よりギタリストの Philippe Pettitのヨーロッパツアーに参加し早くも頭角を顕わし、 92年にはベストジャズボーカリスト賞(ジャズフィラデルフィアマガジン主催) を獲得する。90年代後半よりアフロセントリック ジャズをコンセプトを 足掛かりにニューヨークはハーレムに移り、パーカッションとベースのみをバックに 歌うジャスミンの特異なアンサンブルを展開、マンハッタンの有名クラブ、 ニューヨリカン ポエツ カフェ、Wetlands,Triadsなどで ライブ活動を通じ、その才を着実に開花させて行った。2000年にはMTV、VHー1 と並ぶ3大音楽ケーブルネットワーク、BET(Black Entertainment Channel)にて、ニューフェイスとして紹介され、2001年にはjazz discoveryシリーズのファイナリストに選出される。 現在はベーシスト/プロデューサーのNob Kinukawaと共に、バンド”Jasmin”のポエトリーリーダー /ヴォーカルとして活動中。

ジャスミンのバックバンド達のインタビュー

Andrew Cheikh Nob Kinukawa

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